コラム:ヒッチハイカーのレジリエンス
ヒッチハイクは果たして”怖い”のか
私が大学の卒業論文として提出したものは「ヒッチハイクは、果たして”怖い”のか –ヒッチハイカーのパーソナリティに着目して-」というテーマでした。このテーマを設定した理由はいくつかあります。私自身が、在学中にヒッチハイクで47都道府県を踏破したことや、その体験談を電子書籍として販売を始めたこと、当時担当してくださった大学教授の小笠原悦子先生が大変面白がってくださったこと、そして大学に入る前から、心理学に興味を持っていたことなどがあります。
レジリエンス
(先述のGRITにも含まれるResilience:レジリエンスですが、)本論文ではレジリエンスにフォーカスを当ててパーソナリティについて調べていました。また、レジリエンスは大きく2つ、細かく7つの要因に分けられるとしています。
【資質的要因】
楽観性、統御力、社交性、行動力
【獲得的要因】
問題解決志向、自己理解、他者心理の理解
スポーツ経験とレジリエンス(先行研究より)
スポーツ経験とレジリエンスには相関関係が認められています。特に「スポーツを成長のツール」として認識して取り組んでいた選手は、レジリエンスが高い結果が出ています(葛西,澁江,宮本,2009)。また、競技成績を問わず競技中の高い覚醒状態が、レジリエンスを高める一要因であるともされています(木村,2010)。
ヒッチハイカーは体育大生よりもレジリエンスが高い
順天堂大学スポーツ健康科学部生122名とヒッチハイカー5名(20代男性2名、10代男性1名、20代女性2名)を対象に質問紙調査したところ、7つのレジリエンス要因すべてにおいて、ヒッチハイカーの方が高い数値となりました。またその内、資質的要因に類される「楽観性」、獲得的要因に類される「問題解決志向」、「自己理解」、「他者心理の理解」ではt検定の結果、有意差も認められました。
ヒッチハイカーのパーソナリティ
インタビュー調査から、ヒッチハイカーの全員がスポーツ経験者でしたが、競技成績は体育大生の方が高く、この点において有意差も認められていました。その他「過去に強いストレスを克服した経験」を持ち、「⋆恩贈り」の概念を持ち合わせた人物たちであるという共通点を見出していました。そのため本論文中ではヒッチハイカーを「心温かな苦労人」であると推察しています。
レジリエンスは後天的かつスポーツで育める
今回の結果からレジリエンスを育む方法として、スポーツが有効であること、(競技成績に囚われるのではなく)子どもの競技中の集中力が大切であることが示されました。そのため、教育のツールとしてのスポーツをオススメするとともに、レジリエンスが高まった結果、将来的にヒッチハイクに挑戦する可能性についても仄めかしておきます。
⋆恩贈り
恩をくれた相手に恩を返すことを”恩返し”と呼ぶのなら、受けた恩をバトンのように次の第三者に渡すことを”恩贈り”と呼んでいます。恩返しの場合は2者で完結しますが、恩贈りの場合は樹形図のように広がりを見せる特徴があります。