第2節 経済分野より「テクノロジー」から考える教育

  • 2025/10/16
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ブロックチェーン技術の発展然り、会社の成り立ち方も変わりそうな今日(株式会社がDAOへなど)、新しい知識や技術のトレンドに適応することは不可欠です。今後益々、技術革新により業務が高度化・均質化されるのであれば、「この人と一緒に仕事がしたい」「この人に仕事を依頼したい」と思われるような人間性がより一層重視されることは間違いありません。ここからは昨今のテクノロジーについて簡単にまとめ、どのようなチカラが求められているかについて整理します。

 

Web3.0

スマートフォンが主流の現在、次なるデバイスとしてスマートグラスやヘッドギアといったVR(バーチャル・リアリティ)機器への期待が高まり、軽量化・廉価化に向けて開発が進められています。またデータはブロックチェーン技術により正確かつ迅速に行われるようになり、AIによる処理も可能となりました。”情報の共有”ができるようになったWeb2.0との大きな違いのひとつは”価値の交換”ができるようになる点にあります。これにより、現行の中央集権的なシステムは脅かされようとしていて、現金は仮想通貨、金融サービスはDeFi、所有権はNFT、株式会社はDAOへとなり替わろうとしています。また職業でいえば、多くの士業(弁護士、税理士ほか)や肉体労働を要する仕事もロボット他に代替されていくと予想されています。

 

6G(シックス・ジェネレーション)

第6世代移動通信システム、通称6(シックス)G(ジー)は2030年の実用化を目指しています。この技術革新は約10年スパンで周期的に訪れています。6Gの世界では「圏外」がなくなるほどの通信範囲を獲得し、低電力化にも成功します。また実用例としては16K画質の3Dホログラムやスーパードクターによる遠隔治療が可能になると目されています。スターウォーズのようなSF映画で見られていた世界が少しずつ近づいています。

 

メタバース

メタバースとはインターネット上に構築された仮想空間を指します。空間内は”アバター”と呼ばれる自分の分身(自身の顔や服装はカスタマイズ可能)が行動します。スマートグラスの軽量化により映像への没入感は増大し、圏外に陥ることなく16Kの画質で3D映像を見ることもできます。またブロックチェーン技術により、仕事もメタバース内で行えるようになります。これまでのネット社会では、現実社会の補完としての役割を担うことが多かったですが、将来的には生活の半分以上をメタバースで過ごし、トイレや食事の時だけ現実世界に戻る、いわばダブルスタンダードのような形になるかもしれません。

 

STEAM教育

このように急速に発展する技術や多様化する社会に対応できる人材を育成することを目指して2000年代以降、各国で「STEAM教育」の重要性が叫ばれ始めました。STEAM教育は、5つの科目の頭文字から名付けられています。

Science:科学 、 Technology:技術

Engineering:工学 、 Art:芸術や教養 、 Mathematics:数学

文部科学省は、STEAM教育の目的について以下のように記載しています。

 

「AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日、文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、さまざまな情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められています。」

 

STEAM教育の掲げるチカラの多くが理系科目である一方、”Art”は異彩を放っています。前述の通り、Artは芸術を指すこともあれば教養(Liberal arts)を指すとも考えられています。いずれにしても文系と理系の垣根を越えるだけでなく、人間の内面にも触れる科目として重要視されています。

 

GIGAスクール構想

GIGAはGlobal and Innovation Gateway for Allの略で「全ての児童・生徒のための世界に繋がる革新的な扉」を意味しています。文科省は「令和の日本型学校教育(答申)」では知徳体×ICT(ICT=Internet and Communication Technology)のベストミックスを目指す」としてGIGAスクール構想を掲げています。

 

「1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する(文部科学省)」

 

ここには学校教職員への教育や予算繰りなどの問題も内在しています。

 

逆行しない「テクノロジー」

ZoomやUberといったサービスはコロナ禍を経て爆発的にユーザー数を伸ばしましたが、ポストコロナ期においてもZoom会議やUberのサービスはおそらく廃れることはありません。かつてラジオを抜き隆盛を極めたテレビもまた、スマートフォンやYoutubeといった製品・サービスに切り替わりつつあります。そのほか冷蔵庫や洗濯機などを踏まえてもテクノロジーの進化により得た、便利さや快適さは、一度受け入れられると逆行しないことは歴史的に見ても明らかです。

 

「テクノロジー」から考える次の時代の教育

先の時代にはなかった新しいもの(環境、デバイス、システムなど)に対応するチカラが必要です。ここでは3つ挙げます。

  • トレンドに適応できるだけのITリテラシー

日進月歩、確実に歩みを進めるIT技術を(生み出せずとも)適応できるだけのチカラが必要です。ここでいう適応力とは、流れてくる情報や技術に対して、ベルトコンベア式(盲目的、受動的)に自身を当てはめるようなものではなく、能動的に精査した上で自身なりに落とし込むようなチカラのことです。

 

  • 感情と向き合うチカラ

インターネットと現実の境目はますます曖昧なものになり、あらゆるチャネルに同時接続することも可能となります。世の中のスピードに振り回されず、たゆたいながら、時にいなすようなチカラも必要です。昨今は老若男女問わず、映画館の上映中にも携帯電話を取り出してしまうほど、孤独に耐えられない方も増えました。世界と自身を切り離し、能動的に孤独を確保した上で自身と向き合うチカラが必要です。

 

  • ネットワークを築ける人間性を磨く

高い専門知識の運用はAIに代替されやすく、高い専門技術も6Gの実用化に伴い遠隔操作が可能となります。つまり、多くの業務が高度化・均質化がなされることとなります。そのような中、仕事において他との差別化を図るうえで重要なファクターが「だれと働くか」「だれに発注するか」といった”人間性”にフォーカスが当たります。他よりも秀でた能力を有していなくとも、接していて心地の良い人や、他者のパフォーマンスを高めるような人が求められると予想されます。